その路を行けば
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ひまわりが笑った ひまわりが笑った

其の壱

甥が夏休みに入り留守番を頼まれる事が多くなった。私は平日休みが多いので姉には都合がいいらしい…。
先週の休日、姉の家に行くと、甥がバケツを握りしめて待ち構えていた。

私の顔を見るなり『行こっ!!』と言う。『この暑いのに外に行くの?』
『ザリガニがオレを呼んでいる』『…』『早く~っ!!』『イヤ…川はやめて…せめて公園とかは?』
『…うん、いいよ。セミもオレを呼んでる』甥の真っ直ぐな目に逆らえず公園に行く事にした。
でも外は暑いなんてもんじゃない、熱中症にでもなったら大変だと、
帽子をかぶらせ、持っていた日焼け止めを塗り、水筒と虫かごを肩に掛けて、
タオルと着替えをリュックに詰めて背負わせた。
甥はじっと私を見つめて『…重いんですケド』と言った。

それから数日後、仕事が14時入りになり、
する事もないので、再び姉一家の部屋探しに出かけた。
あま市の『甚目寺マンション』、
リビングが広い3LDK。

一階なので甥が走り回っても大丈夫そう。
南窓の外に目をやると、美味しそうなトマトが…。
太陽をいっぱい浴びて育っていくトマトを 観察するのもいいんじゃないかと思う。
そして西側を流れる用水路を覗いてみると、
亀や鯉が気持ちよさそうに泳いでいた。
甥っ子が喜びそうだ。

前回言われた甥っ子のリクエストを忘れてはいけないと思い近所の公園に行ってみた。
近所の公園とはいえ、かなり本格的?な公園。走り回れる程の大きな敷地には緑が溢れ、
木陰のベンチで読書なんてしたら気持ちよさそうだ。でも今は暑すぎるので秋頃かな…。

散策を終えると、お昼時。今日のランチは
甚目寺マンションから2.7kmの
Ristorante『Castagno』。

以前店の前を通りかかり、合掌づくりの外観に惹かれて
来てみたかった『イタリアンレストラン』
店内に入ると広々とした空間が広がる。
歴史を感じる建物にモダンなテーブルや
チェアがマッチしてオシャレ。

オーダーしたのはオススメのパスタランチ。
前菜、パン、パスタ、デザート。
どれもがとても美味しくて大満足。
値段もお手頃なので次はディナーに来ようと思い、 その日の部屋探しを終えて仕事に向かった。

−そして先週の休日、虫かごと虫取り網だけでいいと言う甥を何とか説き伏せ公園に行った。リュックと水筒と虫かごをガチャガチャとぶつけながら走り出す甥。『ちょっと、待ってよ!!』『ムリーっ!!』『…そうですか、でも遠くに行かないでねー』『わかったー!!!』木陰のベンチに座り、甥の姿を探すと、リュックを背負い、虫かごと水筒を肩にかけ、手に虫取り網を持って滑り台で遊んでいる。『荷物を置いてから遊んで』と言おうとしたが、滑り終えた甥は大きな木に向かって駆けていく、真横を見ながら…。視線の先には鉄棒、先に鉄棒セミかで迷っているらしいが、危ないので『前を見てー!!!』と叫んだが、今度は振り返ったまま駆けていき、大きな木にぶつかった。あわてて駆け寄るが何事もなかったように起き上がって木を物色している。『大丈夫?』『しっ!!』『何?』『逃げちゃうじゃん』こちらを見ずに言う。『…そうじゃなくて、どこか痛くない?』『…』木を見上げる甥の視線の先に大きなセミがとまっている。しかし甥は届かない。そして私を見る。『何?』『獲って』『ムリ』『届くでしょ?』『届くけどムリ』『どーして?』『ムリだよ…』

蝶なら子供の頃捕まえた記憶はあるが、セミは初めて。甥の虫取り網で、そーっと木に止まるセミを網に入れた。
…セミは動かない。『ど、ど、どーしたらいいの?』『動かないね…』『で、どーするの?』『網を動かして』と言った瞬間、
セミがジージー鳴きだし、バタバタと網の中で飛び始めた。『イヤ〜ッ!!』パニックになる私を見て甥がゲラゲラと笑いだす。
『笑ってないで何とかしてっ!!』『アッハッハッハ…く、くるしい…』頼りにならないので、セミが入った網を地面に着けた。

笑い終えた甥がセミを網から取り出し、虫かごに入れようとして私を見る。『何?』『開けて』と言うので虫かごの蓋を開けると、横からセミを持った甥の手が伸びてきた。『きゃっ!!』っとびっくりして虫かごを落とす私の声にびっくりした甥がセミを放してしまい、地面に落とされたセミもびっくりしてジージー、バタバタともがいている。キャーキャー言う私とジージーバタバタともがくセミを見て甥が爆笑している。『ちょっと!!何とかして』と言うが甥は笑い転げている。と、その時セミは飛んで逃げていった…。飛んでいくセミを呆然と見ていたが、我に帰り甥を睨む。でも可笑しそうにしている姿を見ると、まあいいかと思えてくる。『私、キミが笑ってるとこ見るの好きなんだよね』『じゃあさ、川行こっ!!!』…そういう事じゃないんだけど。『今日はヤメよ』『なんで?楽しいから笑うよ。ねー笑わないの?』『え?私?』『見た事ないよ、笑ってるとこ』『えー?いつも笑ってるよ。ほら、今も』と言って微笑む。『違うよ、笑った顔するんじゃなくて、笑っちゃうんだよ』『ん?何が違うの?』

『笑っちゃうの、勝手に体が。楽しくて。』『体?顔でしょ?』と言うと、何も言わずに駆けて行った。