その路を行けば
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魔法がきれるころ 魔法がきれるころ

其の弐

この前アパートを見せてもらった時に『もっと広くて、緑がいっぱいのマンションはありませんか?』と言ったので
連絡があった。『ありましたよ、豊橋市に。ゼヒ見に来てください』だって。『ゼヒ』って言われたら行くしかないでしょ。

と言う訳で、またまた豊橋に行った。さすがに3回、しかも立て続けに毎週行ってるので、電車の乗り換えも慣れてきた。
マンションに到着。『広~い…なんか空気が美味しい気がする』芝生の絨毯を歩く
…ヤバっあまりにも気持ちいいので芝生を踏んじゃった。マズいよね、と思い、そっと歩道に戻る。

子供の頃から芝生を見ると私はアリを探す。
なのでそっと芝生に座ってアリを探した。
…といっても見つけて何かする訳じゃないけど…。

最近、私の頭の片隅に何か変な感じのものがある。きっかけは数ヶ月前の、大人の仲間入りをする『儀式』。
よく会う友達は見慣れているけど、久しぶりに会う友達とか、数年ぶりに会う同級生にはちょっと驚いた。
…なんと皆んな大人の顔になってきていた。会場で中学生の頃よく遊んだ友達と久しぶりに会って
『今は何やってんの?大学?』と話しかけると『そう、でも遠いから大学の近くにアパート借りて、そっちに住んでる』

ちょっと変わった趣味を持つ彼女とは何故だかミョーに気が合い、よく遊んでいた。でも違う高校に行くことになり、
それ以来会っていなかった。久しぶりに話していると、彼女が突然『私、二枚貝が好きじゃん』と言ってきた。
『ニ…ニマイ?…あー貝ね』そうだった、中学ニ年の頃、友達5~6人で潮干狩りに行った。
私たちはキャーキャー言いながら砂を少し掘ったり埋めたりして遊んでいたが、この子だけはミョーに張り切って、
そこらじゅう掘りまくっていた。そろそろ帰ろうかと話していると、両手に貝を持ってニコニコして近づいてくる。
大きめの貝だったので、なんだろう?と思い近づいてみた瞬間、なんと貝から中身がでろ~んと出てきた。
私たちは『キャ~』といって気持ち悪がって逃げたが、この子はソイツを手放さず、
信じられない事に家に持ち帰ってイロイロ調べては、聞いてもいないのにイロイロ説明してくれた。
…ときにはキモい画像を見せながら。

『高二の頃ね、将来なにしようかなーって考えてたら、頭に浮かんだのが二枚貝だったの』『え?貝の大学』
『ハハっ無いでしょ貝大学。二枚貝を研究してる先生がいる大学に行ってるの』
『ふーん…で、将来はもしかして貝博士になるの?』
『うーん…そこまではまだ…でもね、私、好きなんだ二枚貝。だから養殖でも研究でもいいから、関わっていきたいかな、貝に』
『アンタの貝マニアっぷりに磨きがかかってるね』と言うと『そうだね、貝にだったら将来を捧げてもいい!!』
『じゃあさ、養殖場とかに嫁に行けば?』と言うと『そっか!!それもアリだよね』などと満更でもない様子。
どちらかというと大人しく、自己主張とかするタイプじゃなかった彼女が、
目をキラキラさせて夢とか語るとは思わなかった…ちょっとカッコイイじゃん。

豊橋市の『ルネスグランドール』外も気持ちよかったけど、室内もイイ感じに風が入ってきて気持ちイイ。
何故か部屋に置いてあるソファーでくつろぎ、スマホをさわってると時間が経つのを忘れる。
…って、くつろいじゃダメだった。案内してくれた人の存在を完全に忘れていた。しかも自分の部屋のようにくつろいで…。
ゴメンナサイと謝ると『全然いいですよ』だって。ならばもっと…と思ったがヤメといた。

そして先月、『儀式』で久しぶりに会った高校の頃仲良しだった友達3人とご飯に行った、同窓会みたいっ!!…って同窓会か。
大好きな焼肉屋で大好物のタンを焼き始めた頃、友達の一人が『やっぱりそっちの仕事に就いたんだ』と、私に言う
『うん』『やっぱり楽しい?』『そうだね、毎日楽しいよ』『へぇーいいな、私なんて毎日ヘロヘロだよ』と別の友達。
『ん?そうなの?そんなに大変なんだ』と聞くと『まあね』と嬉しそうに言う…『どうなの?実際にやってみて』と聞くと
『ん~まだ見習いだからね…でも美味しそうに食べてるお客さんを見ると、早く私も美味しいもの作りたいって思う
『休みは?やっぱり平日だよね?』『ないよ休みなんて。っていうか休みの日はお店の道具使って練習させてもらってるから』
『えーっ!!私なら絶対ムリ!!!』 『別に休んでもいいんだけどね、こっちからお願いして使わせてもらってるから』 『…そーなんだ』
なんだろう…高校時代はどこかに出かけても、すぐに『疲れた~』とか言ってダラダラするのが大好きで、
部活やってる子には『よく日曜日まで練習なんてやるね~』なんて言ってたのに…。

一度ソファーから立ち上がったけど、あまりにも心地よくて結局またソファーに呼び戻されてしまった。
『…もうちょっとだけいいですか?』と案内してくれた人に聞くと『いいですよ』と言ってくれたので、
すこしくつろいで『ありがとうございました、帰ります』と言ってマンションを後にした。

なんだろ?成人式が終わった頃から少しづつ私の中にモヤっとするモノが…。
家に着くと、また例の猫が玄関の前で寝ていた。

でもって今月のある日のこと。祖母に友達の話をすると
『夢とか目標があって、それに向って頑張ってるっていうのはいいねー』と言われ、
なぜか少しイラっとした。『私だってそうじゃん』と言うと『知ってるよ、…あんたなら大丈夫』
と言われた。…でもこの時はなぜか『大丈夫』って思えなかった。